名ばかりの管理職として長時間勤務を強いられ、体調を崩して休職に追い込まれたとして、コンビニエンスストア「SHOP99」の元店長が、店舗を展開する九九プラス(東京都新宿区)に残業代や慰謝料計450万円の支払いを求めた訴訟で、東京地裁立川支部は31日、計165万円の支払いを命じた。
飯塚宏裁判長は、仕事が店舗の管理に限られ企業経営に関与していなかったことなどから「管理監督者とは認められない」と認定。うつと診断され休職したのは長時間労働が原因だとした。
判決によると、原告の労働者は07年6月に店長となり、4日間で80時間の勤務や連続37日間出勤など過酷な労働を強いられた。しかし、管理職だとして残業代は支払われず、07年9月にうつと診断され、翌月以降現在まで休職している。
ここでのポイントは、「管理監督者として認められる基準」についてです。店長について、たしかに店舗全体を管理する立場にあるかもしれませんが、ただ、「管理職」イコール「管理監督者」といえるかというと、必ずしもそうでありません。
管理監督者の範囲について、行政通達は、「経営と一体的な立場にある者の意であり、これに該当するかどうかは、名称にとらわれず、その職務と職責、勤務態様、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か等、実態に照らして判断すべき」(昭22.9.13基発第27号、昭63.3.14基発第150号)としているだけです。
具体的には、
(1)経営方針の決定に参画している
(2)部下の労務管理上の指揮権限を有している
(3)出退勤について厳格な規制を受けず自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にある
(4)地位や職務に見合う十分な報酬が支給されている
といった点が判断のポイントになります。
実際、会社が課長以上を労働時間規制の外に置く管理職として処遇し、労基法の管理監督者として扱っていたとしても、単に役職が課長だからという理由だけでは労基法上の管理監督者に該当しません。
今回の判決のように、管理監督者としての立場で残業代を払っていない場合など、争いになると会社側が敗訴になるケースがほとんどで、その場合は未払い賃金として過去に遡って支払い義務が生じることがあります。
中小企業において、労働時間・休憩・休日の適用除外となる労基法41条の管理監督者を厳密に考えた場合、おそらく「役員クラス」の者でなければ該当しないというのが実情ではないでしょうか。仮にこの「名ばかり管理職」に該当しそうな労働者が自社にいる場合は、会社として労働時間管理・賃金体系の見直しをはじめ何らかの対応が必要になってきます。
社会保険労務士
平井 利宗 |